私の理由 キヨミ①
#1 ホテル 夕方 |
高級ホテルの一室。カーテンの開け放たれた窓からは新宿の街が見えている。
部屋には男の荒い息遣いと女の喘ぎ声が響き、ダブルベッドの片隅に
女子高生の制服と下着が乱雑に脱ぎ散らかしてある。
ベッドで上になっている男。顔は見えないが少しやせ気味の背中には
吉祥天女の刺青が施されている。
男の下には、感じている表情の少女・キヨミがいる。
キヨミNA「わたしはキヨミ 17歳。援デリでバイトしている。
いわゆるウリってやつだ。理由はお金。それに…
多分セックスも好きなんだと思う。
もちろん悪いことなのは知っている。でも、しょうがない」
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時間が少し経過している。キヨミは裸のままベッドでゴロゴロしている。
刺青の男はシャワーを浴びた感じで上半身裸でスラックスのみ。
キヨミの枕元にポンッと10万円を置く。
キヨミ「すっごーい。オジサンって…やっぱりヤクザ屋さんなの?」
答えない男。男の顔が初めてわかる。男はやせた中年で、優し気な表情を
している。刺青がなければとてもヤクザには見えない。
キヨミ「あ、そうだ。私のもういっこのLINE教えとくから、今度からそこに…」
男、困った表情で半身を起こしたキヨミの髪をクシャクシャっと撫でながら
男(途中で)「イヤ。いいや」
キヨミ「…良くなかった?」
男、クスッと笑い
男「イヤ。女子高生っていったって中身は立派な女なんだな」
言葉の意味をつかみかねて、キョトンとした表情のキヨミ。
#2 学校 昼 |
キヨミの通う高校。お嬢様女子校のような雰囲気。
授業中の教室。退屈そうに授業を受けているキヨミ。
キヨミNA「援デリ(援助交際デリバリー)ってのは、風俗や出会い系なんかに
登録できない、私たちみたいな未成年の女の子が登録して、ベース
(って私たちは呼んでいる)が私たちになりすまして、出会い系サイトや
SNSなんかで客を募集してくれて、連絡のあった客とのやりとりを
スクショして送ってくれる。
後は直接会って、お金もらってセックスするだけ。
ベースにはもらったお金の3割を渡せば、メンドクサイ募集もやって
くれて、なにかトラブった時のケツモチってやつもしてくれるらしい。
でもお金持ちの客とかには、直接連絡先を教えて、コッソリ会ったりも
してるけど…」
その時、ポケットの中のスマホが震える。通知だ。
こっそりとスマホを取り出し見るキヨミ。見覚えのない相手からのLINE
(もしくは直メ)が届いている。
何気なくメッセージを見て、表情が驚きに変わる。
メッセージ画面に「お前ももうエイズだ。ざまあみろ」の文字。
#3 マンション ドア前 夕方 |
マンションのドア前。インターホンを押すキヨミ。
しばらくの間。ガチャッとドアが開く。
男前だがチャラそうな男・ミウラが立っている。
ミウラ「珍しいな、キヨミがココに来るなんて」
#4 マンション |
キヨミがベースと呼んでいる。マンション。
といっても、安っぽい応接セットと机にノートパソコンがあるだけの
ワンルームマンション。
応接テーブルの上にはスマホが数台置かれている。
ミウラ「まあ座れよ。いまなんか飲み物出してやるよ」
ミウラ、ひょうひょうとした感じでうながす。
キヨミNA「この男はミウラ。でっかい半グレ組織にこのベースを任されて
経営してるって本人は言っている。
けど、いつ来ても1人しかいないし、ホントはコイツ1人でやってる
んじゃないかと私は思っている。
私と唯一タダでセックスしてる男だ」
キヨミの表情は厳しい。ミウラ、気づいて
ミウラ「どうした? コワい顔して」
キヨミ「コレ、アンタのイタズラなんかじゃないよね?」
スマホを手渡す。ミウラ、受け取りながら
ミウラ「なんだよイタズラって…」
画面を見たミウラの表情が変わりキヨミを見る。
ミウラ「オイ…コレって…」
キヨミ「…………」
つづく
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