amamiwatsuki’s diary

過去に書き溜めたシナリオなどをアップしていきます。たまに新作も・・・

私の理由 キヨミ④(終)

f:id:amamiwatsuki:20180626143745j:plain

 

#13  ホテル 夜

 

    安っぽいビジネスホテル(アパ?)のツインの一室。

    ツインベッドの1つ。奥側のには制服姿のキヨミが腰掛けている。

    対峙するように、もう一つのドア側のベッドには50歳前後の厳格

    そうなスーツ姿の男が腰掛け、その後ろのドア近くの壁にミウラが

    もたれている。

    男、いぶかしげな表情でキヨミに向かって

 

男「───もう一度言ってくれんか?」

キヨミ「…だから、検査するから少しだけ血を頂戴って言ったの」

男「だから何の検査だと聞いとるんだッ!」

 

    言い淀むキヨミ

 

キヨミ「それは……」

ミウラ「エイズだよ」

男「エ……?」

    

    ミウラを見る男。ミウラ、無表情なまま淡々と

 

ミウラ「エイズなんだよ俺たち。それでコイツに感染したヤツを探してんの。

    だから血が必要ってワケ。わかった?」

男「な、なにをバカな…」

ミウラ「アンタ、コイツとナマでやったんだろう? おまけに嫌がってんのに

    ケツに指まで入れたらしいじゃん。かなりアヤシイとみたね」

    

    男、赤面しながらも怒った様子でミウラに向かって

 

男「わ、私は高い金を払ってこの娘を買ったんだ! ナマでやろうが指を入れようが

  私の勝手だろうッ……ははあ、さてはお前ら新手の恐喝だな? エイズだとか

  脅して金でもせびるつもりなんだろう? そうはいかんぞッ」

 

    キヨミ、一瞬ムッとなるが、男の様子を見ながらため息をついてボソッと

 

キヨミ「……。コイツも違うみたい…」

 

    男、青ざめてキヨミに向き直り

 

男「ほ…本当にお前らエイズなのか……」

キヨミ「オジサンもそうかもッ──」

    

    言い終わるよりも速く、男がキヨミへと組みつき押し倒し

    キヨミの首を片手で絞め、片手でキヨミの顔に何度も平手打ちを浴びせながら

 

男「いったい…いったいどうしてくれるんだッ! 私には仕事も家族もあるんだぞッ

  私がエイズだと…なんてことをしてくれたんだッ」

 

    喚きながらキヨミを殴りつける男。泣いている。

 

男「娘だって…お前みたいな淫売じゃなくて、受験を控えた娘だっているんだぞ!

  それなのに…それなのに…」

    

    男の手が力なく止まり、うなだれる。

    キヨミは冷静な冷たい表情で

 

キヨミ「私だって進学希望だよ。案外オジサンの娘だってウリやってんじゃないの?」

    

    男、カッとなって再び手を上げ、殴ろうとする。

    その時、男の身体が反転して、顔に真正面から拳が叩きつけられる。

    男の身体がキヨミの横へと投げ出される。

    必要以上に血まみれの顔で、拳の方角を見上げる男。

    ミウラが立っている。ミウラの右手の拳は横に3本に切り裂かれ

    左手にはキーチェーンが握られている。

    指の間から飛び出したカギ先が血に塗れている。

    ミウラ、変わらず無表情のまま男に向かって

 

ミウラ「かもって言ってんだろ。けど、これでさらに確立上がっちまうな…」

男「ヤメ…ヤメ…」

 

    構わず男を左手で引き寄せ、右手で男の顔面を何度も何度も殴りつける。

    呆然とその様子を見ているキヨミの顔にも血が跳ねる。

    殴り続けるミウラ。

    その表情はうって変わって、不安げでいまにも泣き出しそう。

    その表情を見てミウラの心中を察するキヨミ。

 

      ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

    同室。夜。時間が経過している。男の姿はすでにない。

    バスルームからガウン姿の風呂上がりのミウラが出てくる。

    右手の1本1本に絆創膏が巻かれているが、態度はいつもの態度に

    戻っている。

    ベッドの上にはキヨミがうつぶせになって寝転がっている。

 

ミウラ「なんだよお前まだいたのかよ…ウチ帰らなくていいのか?」

 

    キヨミ、うつぶせのまま答えない。

 

キヨミ「…………」

 

    ミウラ、冷蔵庫のビールを取り出しながら

 

ミウラ「あ、そっか。顔ハレてんだもんな…氷いるか?」

 

    キヨミ、答えない。ミウラがじれて横に座り、肩を引き上げ仰向けにする。

    ミウラの表情が驚きに変わる。

    キヨミは泣いている。ハレた顔を涙でグシャグシャにしながら、仰向けに

    されたことすら気づいてない感じで、独り言のように

 

キヨミ「──キショー…私だってなりなくてなったんじゃないのに…チキショー…

    感染(ウツ)したくて感染したんじゃないのに……チキショー…

    チキショー…」

 

    そこにミウラの声が降ってくる。

 

ミウラ「──ヨミ…キヨミ」

 

    ハッと我に返り見上げると、ミウラが覗きこんでいる。

    ミウラ、何事もないようにキヨミを引き起こし

 

ミウラ「なっ、セックスしようぜ」

キヨミ「なっ…なにバカな事言ってんのよッこんな時に…」

ミウラ「こんな時だからじゃん。俺たちもう感染るとか感染らないとか

    カンケーないし」

    

    懲りずに抱きよせるミウラ。

    キヨミ押し返そうとするがなかなか押し返せない。

 

キヨミ「離せよッ バカミウラッ! エロミウラッ!」

 

    ミウラ、クスッと笑って

 

ミウラ「ショージ…」

キヨミ「エ?」

ミウラ「ミウラショージって言うんだよフルネーム。ダセーよな」

 

    キヨミは抗うのを止めている。

 

ミウラ「知らなかっただろう?」

    

    言いながらチュッとキスするミウラ。あっけにとられているキヨミに

    再びキス。恋人同士のキスになっていく。

 

    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

    ホテル。同室。朝。

    目覚める裸のキヨミ。隣ではやはり裸のミウラがぐっすり寝ている。

    キヨミは身体を起こし、何気なくテレビをつける。

    テレビではニュースが流れている。

アナウンサー「──次は暴力団関係のニュースです。昨夜新宿区で、広域指定暴力団

       〇×組の幹部・柳川静さんが普段より対立関係にあった暴力団□▽組

       の組員・阿部勝容疑者に拳銃で撃たれ死亡しました──」

    

    何気なく画面に目をやるキヨミ。キヨミの表情が驚きに変わる。

    画面に映し出された死亡した男は、ファーストシーンのヤクザだ。

 

アナウンサー「──警察では今回の事件により抗争がさらに激化するものとみて

       警戒を強める──」

    

    呆然と画面を見るキヨミ。

 

キヨミ「…………」

    

    自分が感染(ウツ)したかもしれない男のあまりにも関係ない死に

    キヨミの中でなにかがふっきれる。

    その時ミウラが目覚める。起き上がりながら

 

ミウラ「ンッ…もう朝か…お前学校どうすんの? サボるんならさっさと次──」

 

    キヨミ、ミウラの言葉をさえぎるように

 

キヨミ「いいや」

ミウラ「エ?」

キヨミ「もういいや。探さなくても」

 

    スッキリとした表情のキヨミを寝ぼけた感じで見るミウラ。

 

ミウラ「エ? エ?」

 

#13  学校 昼

 

    授業中のキヨミ。相変わらず退屈そう。

 

キヨミNA「あれから2か月。私は発症していない…そして」

 

 

#14  ミウラのマンション 昼

 

    援デリの事務所。

    ミウラがソファに座り出会い系サイトに、募集の書き込みをしている。

    「本物のJK2年です。助けてくれる人を探してます…」

 

#15  ラブホテル 夕方

 

    ラブホテルの一室。制服やカバン、下着などが乱雑に散らばっている。

    ベッドの上ではキヨミが騎乗位で見知らぬ男に抱かれて喘いでいる。

 

キヨミ「アン…アンッ」

男「ホラッ、言った通りナマだと全然気持ちいいだろう?」

キヨミ「でも…」

男「大丈夫だよッ。お礼もはずむから!、ねッ」

 

キヨミNA「相変わらず援デリのバイトは続けている…もちろん、いろいろと

      悪い事なのは知っている……」

 

    感じているキヨミの表情。

 

キヨミ「ダメ…イッチャうかも…」

 

キヨミNA「でも、しょうがない──」

 

 

                             END

©あまみわつき スキマプロダクツ